序章 第3話 リリア (ってことは、確実にバレたわよね) リリア (私が“聖女"って) 一般等級の冒険者なら誤魔しが効くかもしれないが、先程の三人の戦いぶりと彼らはS級という最高位の等級を持つパーティー…隠し通すのは無理だろう。 心の内で溜息を吐いて諦めると、同時に、 倒した魔獣とは別の場所から出現した同じ種類の魔獣が、こちらに向かって襲いかかってきた。 ?? 「危ねえ!!」 リリア 「魔獣が私に触れられるわけないでしょ」 ?? 「な、なんだ!?」 ?? 「魔獣はどこにいったんだ?」 魔獣は結界に触れた瞬間、白い光に覆われ、魔石だけを残して消滅した。 ???? 「どこにもいっていませんよ」 ???? 「消滅したんです」 ??? 「……こんな威力カの結界、見たことない」 ?? 「どうしたんだ、オネストさん」 オネスト 「いえ、彼女が結界を張られた時の神聖な気に心当たりがありまして…」 オネスト 「ついこの間、ウェヌス王国で感じたものと一緒です」 オネスト「もしや、貴女様は──」 私の正体を察したオネストさんが、畏(かしこ)まって話しかけてきた。 リリア 「……ええ、聖女よ」 リリア 「ただし、国外追放された、ね」 ??? 「…噂通りなら……何で生きてるの?」 リリア 「げっ、もう噂なんて出回ってるの?」 リリア 「っていうか、どんな噂なのよ」 ?? 「ああ、あれか!」 ?? 「偽の聖女を語った不届き者は処刑して、王都には真の聖女を迎え入れたってやつ」 リリア (あんの…クソ王子!) おそらく、王子が女狐(ユリア)を難なく迎え入れるために、王都の住民へ大々的にそう公表したのだろう。 あのバカ王子がそこまで頭がいいわけがない。 リリア (…間違いなく大臣の差金でしょうね) リリア 「処刑なんてされてないわよ」 リリア 「できるはずないもの」 ???? 「でしょうね」 ???? 「貴女がここにいることにも納得がいきます」 白魔道士の男が、持っていた魔導書と錫杖(しゃくじょう)の二つの武器を異空間に仕舞う。 上位の冒険者ほど普段は身軽と言うが、それは異空間収納を持っているからだ。また、無詠唱はできて当たり前。 異空間収納とは文字通り異空間に物を収納できる魔法で、容量は持っている魔カ量に寄って異なる。 私の魔力量は桁外れで、とてつもなくたくさん入る。のだが、勿体ないぐらい中身はスカスカで十分の一も入っていない。 ?? 「どういう事だ??」 ??? 「…分かってたけど、…バカ?」 ??? 「彼女が本物の聖女なら、処刑なんてすれば国が滅びる」 ???? 「ええ。ですから、彼女がここに居るということは……」 ?? 「あんたが真の聖女ってことか!偽物が処刑されて良かったな」 悪気なく、にかっとそう言われた。なんと言うか…、バカ王子とはまた違ったバカだ。 リリア r.........」 ???? r...……」 呆気に取られたような顔をする私の前で、白魔道士の男も顔を手で覆い溜息をこぼしている。 ??? 「……バカなの?」 私と白魔道士の男の気持ちを代弁するかのように、黒魔導士の男がボソッと言った。 オネスト 「あはは」 オネスト 「真の聖女のことは分かりませんが、噂の偽の聖女とは彼女のことですよ」 オネスト 「もっとも、偽物ではないようですが」 ?? 「??」 ???? 「何があったのかは知りませんが…彼女が本物であるからこそ、国は彼女を国外追放としたのでしょう」 ?? 「えーっと、つまり、偽物が本物で本物が偽物ってことか?」 リリア 「偽物かは分からないわね」 リリア 「神託では聖女と認められたらしいし」 ??? 「…厄介払いしたかった奴の仕業…」 リリア 「そうね、心当たりはあるわ」 ?? 「まっ、難しいことは分かんねーけど…」 ?? 「あんたは聖女で間違いねえんだろ?」 リリア 「…ええ」 ?? 「ひとりか?」 リリア 「そうよ、メールの町へ向かう途中なの」 ?? 「なら、オレ達と一緒にこねえか?」 リリア 「いいの?」 ???? 「私は構いませんよ。また魔獣が出たら力を借りたいですから」 ??? 「…同じく」 オネスト 「それでは改めてよろしくお願いします、聖女様」 リリア 「そんな堅苦しくならないで下さい」 リリア 「国外追放された聖女ですし、"リリア"と気軽に呼んで貰えると助かります」 ?? 「オレはカイ、よろしくな、リリア」 リリア 「カイはバカだけど社交性に優れてるわね」 カイ 「オレ…今、肢(けな)されたのか?褒められたのか?」 ??? 「…両方でしょ」 ??? 「…名前、セシル……よろしく」 ???? 「私はクライト、よろしくお願いしますね、リリアさん」 カイ 「そうそう、オレたちに敬語はなくていいからな」 カイ 「クライトは普段からこんな話し方なだけだから」 クライト 「こんな、とは失礼ですね」 セシル 「…メールの町まで二日半……寝る」 リリア 「えっ!?そんなにかかるの?」 オネスト 「そう言えば、リリアさんはどのようにメールの町まで?」 オネスト 「見たところ、馬車もないようですが…」 リリア「と、徒歩でかな…?」 カイ 「お前、バカだなあ。メールの町まで徒歩なんて初めて聞いたぞ」 リリア (…殴り倒したい) セシル 「……カイには言われたくないと思う…」 クライト 「普通はウェヌス王国で馬車を借りますからね。事情なだけに仕方がありませんよ」 リリア 「……馬車を借りる暇はあったんだけどね」 オネスト 「じゃあ、本当に徒歩で向かうつもりだったんですか?」 リリア 「いや、あはは…国から出るの初めてだったから」 リリア 「距離を知らなかったわ」 セシル 「……カイが二人……?」 リリア 「失礼ね、私とカイを一緒にしないで!」 クライト 「そうですよ」 クライト 「彼女は世間知らずなだけで、カイと同レベルのバカと決めつけるには早いです」 リリア 「…クライトさん、何気に酷いこと言ってる自覚ある?」 カイ 「オレの扱いが一番酷いと思うのはオレだけか?」 そうして私は、偶然にも出逢ったS級冒険者パーティー"希望の光(エスペランサ)"と共にメールの町へ向かうことになった。