満点の星空を君と見上げながら 「ねえ、あなたはどうしていつも星空を見上げているの?」 彼はベランダで望遠鏡を覗くことに夢中になっていて、私の声なんてこれっぽっちも届いてなかった。 いつも私が理由を尋ねても、彼がそれに応えてくれることはない。   ここは田舎町だから、そんなものを使わなくても星空は十分に綺麗だった。 その日の晩、私は彼が何を見ているのかが気になって、真夜中にベランダに向かい、望遠鏡を覗いてみた。   そこに映っていたのは、とても素敵な星空だった。 ――こんなに綺麗なんだ……と、思わず感嘆のため息が漏れるほどだった。   すると背後から声がした。 どうやら彼を起こしてしまったらしい。   「どうだい? 綺麗だろう?」 「うん、そうだね。でもどうして毎晩星空を見上げているの?」 「そうだね。大事なことを話していなかった。人は死ぬと星になれるって知ってるかい?」 「うーん、聞いたことがあるようなないような……」 「僕は死んで星になりたいののさ。だからいつも僕は望遠鏡を使って死に場所を探している。もし自分が死んだら、どの辺りで星になりたいのかって考えているのさ」 「死ぬって……、そんな簡単に……」 「で、昨日見つけた。僕と君が一番輝ける場所をね。今見えているだろう? その一等星のすぐ隣、そこに丁度いい場所があるんだ。だから僕と一緒に星になろう」 そう彼が言ってくれた。 私は嬉しくて涙が溢れた。 余命一ヶ月を宣告されていた私にとって、その言葉はかけがえのない一言だった。 それでも、彼を巻き込むわけにはいかない。   「ううん、もし星になれるんだとしたら、私は一人でも十分に輝けるから。だから大丈夫」 「確かにそうかもしれない。でも、僕にとって君のいない世界は生きていて何の意味もないんだ。だからすぐに迎えに行く。だからそれまで待っていてほしい。約束する」 そう言って、彼は私を抱き締めた。すっかりと細くなった身体を、力一杯抱き締めた。この人と出会えて本当に良かった。そして私は彼に最後のお願いをした。   「あなたは最後まで自分の人生を生きてほしい。もっと輝かしい人生を送って、いつか星になった私を迎えに来てほしい。だから、生きて――。必ずまた会えるから……」 彼は泣いていた。私は心の底から思った。 もっと生きていたいと。この人と一緒にいたいと。 その願いは彼に違った形で届いており、彼を死へと誘っていた。けれどもそれは私の望む結末ではない。 だから私は決めた。 彼の望遠鏡で一番最初に見つけてもらおう。 そしてどんな星よりも、力強く輝くことに決めた。