序章 第2話 ウェヌス王国を追放された私は、隣国のルフト王国を目指していた。 リリア (まずは、メールの町の冒険者ギルドに寄ろうかな) リリア 「あれは!?」 メールの町へ続く道を歩いていると、前方で荷馬車が魔物に襲われていた。 リリア (…魔獣デモンバード) リリア (魔物から魔獣になったのね…やっかいな) 魔物の好物は魔カを持つ生命体。 故(ゆえ)に生まれながらにして魔力を持つ人間は、魔物にとっては大の好物だ。 基本は人間を襲うことの多い魔物だが、稀(まれ)に奴らは共食いをすることがある。 魔物は障気から生まれるため、生まれながらにしてその身に癖気を宿す。 そして、奴らが療気を一定以上超えて摂取すると、より強力で狂暴な"魔獣”へと進化する。 この魔物はその共食いをしたことによって、魔獣へと進化したのだろう。 リリア (魔獣は聖属性の魔法でしか倒すことができない…) リリア 「しかも、それが4体…」 聖属性の力は持っ人間は少なく、教会の神父の階級から上は必ずその力を有している。 主な能力は上級治療系の回復補助魔法や支援系の結界·付与魔法だが、攻撃スキルは一切覚えることができない。 ちなみに、付与魔法とは自分の持っている属性を自分自身や対象物に掛ける事で、身体、武器性能を向上させる魔法。 また、治療系の回復·補助魔法は光属性を持つ者なら必ず扱えるようになる。 治療や付与は教会で行っており、その付与を受けて冒険者や王都の騎士団が魔獣を討伐するのだ。 そのため、国によってはとても重宝されており、攻撃スキルを持てないがため、大抵が教会に属している。 リリア (さすがに力を使ったら、聖女だってバレるわよね…) リリア (ウェヌス王国のニの舞いはごめんだわ) ?? 「くそっ!魔獣だなんて聞いてねえぞ」 ???? 「さて、どうしましょうか……」 ??? 「諦めてもらうしかないんじゃない?」 ???? 「そうですね」 ????「ここは身の安全が最優先、…悔しいですが、オネストさんには荷馬車は諦めてもらいましょう」 ???「いい?」 オネスト 「ええ、命には変えられません」 オネスト 「こうも魔獣が立て続けに出ては、諦めるしかありませんね」 ?? 「けど、オネストさん困るだろ?」 ??「王都で珍しい物を手に入れたから、それを売って教会の子供たちに賛沢をさせたいって言ってたじゃんか」 オネスト「ですが……」 リリア 「エンチャントサークル」 本当は陰から見守って、無事に彼らが逃げれたら自分が魔獣を倒そうかと思っていたんだけど… リリア (あんな話を聞いたら、助けないわけにはいかないじゃない) 聖属性の付与魔法を冒険者の三人へと同時に掛ける。 ?? 「うおっ、なんだなんだ!?」 ???? 「これは……!」 ??? 「…聖属性魔法付与……」 リリア 「助太刀するわ」 ???? 「貴女は一体…」 リリア 「まあ、それはコイツらを倒した後で、ってことで」 ?? 「誰だか知らねえが、助かった!」 ?? 「ありがとな」 ??? 「ん」 リリア 「どういたしまして」 リリア 「ホーリーサークル」 荷馬車とその持ち主であるオネストさんに神聖な結界を張る。 これで魔獣は、彼と荷馬車に一切手出しができない。 何故なら奴らが触れれば、その身はたちまち浄化させられてしまうからだ。 オネスト 「これは…!!」 リリア 「さっ、これで思う存分、戦えると思うわ」 ?? 「任せろ」 ???? 「聞きたいことは山ほどありますが…」 ???? 「お陰で戦闘に専念できます」 ??? 「…アイシクルエンド」 絶対零度の冷気が魔獣達を包み、一瞬にしてその場で氷漬けにする。 リリア (氷属性の上級魔法…、こんな簡単に詠唱破棄ってできるものだったかしら?) ???? 「シャイニングレイ」 上空から放たれた光の柱が、氷漬けの魔獣達に降り注ぐ。 リリア (光属性の上級魔法!?) 光属性は治療系の回復,補助魔法が殆(ほとん)どで、攻撃系の魔法は殺傷能力に欠ける。 けれど、それは初級魔法でならの話だ。 上級ともなれば、他の四属性とは比べものにならないぐらい圧倒的な火力を持つ。 だがしかし、光属性の魔法はいちいち魔力の消費量が多いがため、上級魔法はそれに見合う魔力量を持つ者しか扱うことができない。 また、上位冒険者になるほど詠唱破棄は必ずと言っていいほど習得しており、攻撃役もできる回復役が多い。 リリア 「あの、オネストさん…」 オネスト 「はい、なんでしょう?」 目の前で繰り広げられる戦闘を眺めながら、荷馬車の傍(かたわ)らにいるオネストさんに話しかける。 ?? 「ふっ」 黒髪の青年が剣を構えて小さく息を吐いたその瞬間、魔獣達はバラバラに切り刻まれた。 リリア (太刀筋が全く見えなかった…) ?? 「うっし、終わった」 武器を腰の鞘に戻して、小柄な剣士がにんまりと笑んだ。 リリア 「あの人達って、有名な冒険者?」 オネスト 「知らないのかい!?」 オネスト 「彼らはS級冒険者パーティーの希望の光(エスペランサ)だよ」 国外追放を受けて早々、私はまさかのS級冒険者パーティーと遭遇したのだった。 リリア「S級冒険者──っ!?」