深夜限定哲学者 エアコンの排気熱 緩く頬と髪を撫でていく マンションのベランダは 今だけお城のバルコニー カクテルグラスの代わりに 発泡酒の缶を揺らして 貴方の誘いを待つの 顔も知らない王子様 空には街明かりに消された星が それでも健気に輝いている 深い深い夜の闇に 溶け消えてしまわぬようにと まるで都会の喧騒に 掻き消えないように早足で歩く どこかの誰かみたいね 煙草一つにも気を遣い 蔓延る常識警察に 指さされないよう 立ち振る舞って 皆、透明人間 吐き出した息も 外気と同じ温度だから 私、誰にも気付かれないね だから人付き合いも気疲れない? そんなことないわ 誰もが虚勢で着飾って 誰もが虚栄で笑顔作って 誰もが虚偽で涙する そんな毎日、ひどいと思う? 本音で皆生きれられたら、なんて ちょっと想像してみましょうか 年老いた人に「おいジジイ」 可愛い子供に「クソガキ」 太った人に「邪魔だデブ」 痩せた人に「骸骨じゃん」 不幸な人に「可哀想(笑)」 幸福な人に「妬ましい」 捻くれ者かしら そうかもね 人はそこまで醜くないわ だけど覚えていて だけど怯えていて 醜くないからこそ 醜くなれることを 温くなった発泡酒 一気飲みして部屋の中へ 今宵も王子様は来なかったね